二国間クレジット制度とボランタリークレジット
JCM and Voluntary Credit
JCM(二国間クレジット制度)とボランタリークレジットは、どちらも温室効果ガスの削減を目指すメカニズムで、異なる枠組みや目的を持ちながらも、相互に関連しています。以下に両者の関係を説明します。
1.JCM(二国間クレジット制度)
JCMは、日本とパートナー国が協力して温室効果ガス削減プロジェクトを実施し、その削減量を両国でクレジットとして分配する制度です。日本政府主導の公式な制度であり、削減した排出量は日本の国際的な気候目標(NDCs:国が自主的に設定する排出削減目標)の達成に利用されます。
JCMでは、公式なクレジットが発行され、これが国家の排出削減目標に向けた報告に使用されます。そのため、JCMは国際的な気候協定、特にパリ協定に基づいた政府間のクレジット取引に位置づけられます。
2.ボランタリークレジット(自発的クレジット)
ボランタリークレジットとは、企業や個人が自主的に温室効果ガス削減プロジェクトに投資し、得られたクレジットを利用する制度です。これらは法的義務ではなく、企業のCSR活動やカーボンニュートラルを目指すために利用されるケースが多いです。ボランタリークレジットは市場で取引されることがあり、炭素市場で自由に売買されます。
ボランタリークレジットは、主に次のような目的で利用されます:
- 企業のカーボンニュートラルや気候変動対策
- イベントや商品のカーボンオフセット
- 個人や団体の環境貢献の一環
3.JCMとボランタリークレジットの関係
JCMとボランタリークレジットは、同じく温室効果ガス削減を目指す点で共通していますが、次のような関係が考えられます。
- 目的の違い:
- JCMは、国家間で公式な気候目標達成のためにクレジットを分配しますが、ボランタリークレジットは、企業や個人の自主的な活動に基づいて利用されます。
- JCMで発行されたクレジットは、通常日本の政府報告に使われますが、同時にプロジェクトの企業パートナーがボランタリークレジット市場で利用する可能性もあります。
- 両者の統合:
JCMを通じて実施されたプロジェクトが、ボランタリークレジット市場での利用を目的とするケースもあります。例えば、JCMプロジェクトに参加した企業が、削減された排出量の一部をボランタリークレジットとして活用し、カーボンオフセットを実施することが可能です。これにより、企業は自社の排出削減目標やカーボンニュートラル戦略を推進できます。 - 透明性と信頼性:
JCMは公式な二国間の合意に基づくため、ボランタリークレジットに比べて監視・報告が厳格です。この厳格な基準を満たしたJCMのプロジェクトが、ボランタリークレジット市場で高く評価されることがあります。JCMでの削減量は、信頼性の高いクレジットとしてボランタリー市場で流通する可能性があります。
4.JCMとボランタリークレジットの相乗効果
- 企業のメリット: JCMプロジェクトに参加することで、企業は信頼性の高い排出削減活動に貢献し、その成果をボランタリークレジットとしても活用できます。これにより、企業は両方の枠組みを活かし、自社の気候目標や国際的な環境評価を向上させることができます。
- 持続可能な市場形成: 両者が共存することで、ボランタリー市場が成長し、さらに多くのプロジェクトが実施され、温室効果ガスの削減に貢献します。
まとめ
JCMとボランタリークレジットは、温室効果ガス削減を目的とした異なる枠組みですが、相互に補完し合う関係です。JCMのプロジェクトは国家間の目標達成に寄与しながら、企業や個人のボランタリークレジットとしても活用されることで、さらに広範な温室効果ガス削減と持続可能な市場形成が期待されています。

